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迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪

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痴漢はどのような罪になるのか?

1 痴漢行為を取り締まる法令

 例えば、性的な欲求から電車内で故意に他人の身体に触れるなどした場合、一般に痴漢と呼ばれ、これが犯罪行為であるということは多くの方が認識しているものと思われます。しかし、法律上、痴漢罪というものがあるわけではありません。
 では、痴漢行為をしてしまった場合、どのような罪に該当するのでしょうか。

⑴ 痴漢をするとどのような罪になる?

ア 痴漢行為が該当し得る罪

 性的な意図をもって他人の身体等に触れた場合に成立し得る罪としては、①各都道府県の迷惑行為防止条例違反、②強制(準強制)わいせつ罪(刑法176条、178条1項)、③強制(準強制)性交等罪が考えられます。この内、③は、性交、性交類似行為を行った場合に成立するものですので、他の罪とは区別がしやすいですが、例えば手で身体に触る行為は、態様によって、①と②のいずれにも該当しえます。後述するように、強制わいせつとなった場合は、迷惑行為防止条例違反に比べ、法定刑が重くなっていますので、この区別は重要です。

イ 迷惑行為防止条例違反となる場合

 まず、迷惑行為防止条例違反について、迷惑行為防止条例は、都道府県によって定めが異なりますが、痴漢行為との関連では、概ね同内容の定めをしています。例として、東京都の迷惑行為防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)を見てみると、同条例においては、痴漢行為に関して、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて」、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」をしてはならない旨を定めています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第5条1号)。この規定および強制わいせつ罪との比較から、迷惑行為防止条例違反となるのは、以下の行為と解されています。

  1. 公共の場所・公共の乗り物(路上や電車・バス等)において
  2. 衣服の上からその身体に触れる行為
ウ 強制わいせつとなる場合

 強制わいせつ罪について定める刑法176条は、「十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」としています。この定めから、強制わいせつとなるのは、以下の行為となります。

  1. 暴行・脅迫を用いて(13歳未満の者に対しては暴行・脅迫がなくても成立)
  2. わいせつな行為(性器や周辺部、臀部、胸部等に触れる行為や、キスをすることなど)をした場合

 ここにいう暴行・脅迫とは、いわゆる殴る・蹴るといった、反抗を著しく困難にするようなものである必要はなく、また、わいせつ行為そのものを暴行・脅迫と評価されることもあります。そのため、触られたことが怖くて動けなかったというようなケースも、暴行・脅迫があったと認定されえます。

エ 具体的な区別要素

 ⒜ 電車内での痴漢

 上記のような違いを具体的事案に即して見ていくと、まず、電車内の痴漢行為の場合、下着の中に手を入れれば強制わいせつ、服の上から触れば迷惑行為防止条例違反とされる傾向にあります。ただ、着衣の上からであっても、長時間にわたり触り続けた場合や、単に触れるにとどまらず、胸をもむ等の行為があれば、強制わいせつと評価されます。

 ⒝ 路上での痴漢

 路上での痴漢の場合は、電車内での痴漢とはまた異なる傾向があり、強制わいせつとされるケースが多くなっています。これは、路上においては、(時間場所にもよりますが)電車内等よりも、周りに人がおらず、被害者が恐怖を感じやすい・加害行為がエスカレートしやすい傾向があるためと考えられます。具体的には、接触部位や接触時間、接触態様において、より厳しく見られる傾向にあります。例えば、路上においては、衣服の上から短時間、胸に触れる場合も強制わいせつとされえますし、胸や性器等への接触のない突然抱きつくような行為も、被害者の抵抗が困難ため、強制わいせつと解されます。

 ⒞ 13歳未満への行為

 13歳未満の被害者に対して痴漢行為をした場合、暴行・脅迫が要件とされていないことから、接触した部位や時間が比較的軽度のものであっても、強制わいせつと評価される傾向にあります。13市未満とは知らなかったとしても、これをもって強制わいせつであることは否定されません。

 ⒟ 準強制わいせつ

 電車内であっても、泥酔している方や、寝ている方に対し、痴漢行為を行うと、加害者が暴行等により抵抗を困難にさせた場合でなくとも、抵抗困難な状態を利用して行為に及んだとして、準強制わいせつという罪になります。準とは、準じるという意味であり、扱いとしては強制わいせつと同様になります。

⑵ 強制わいせつは罪が重い

ア 法定刑

 強制わいせつの法定刑は、6カ月以上10年未満の懲役であり、迷惑行為防止条例の罰則が、多くの都道府県で6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(一部地域では1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)とされているのに対し、かなり重くなっています。くわえて、もし強制わいせつにおける暴行行為やわいせつ行為により、被害者に怪我をさせてしまえば、強制わいせつ致傷となり、さらに法定刑は重くなりますし、裁判手続も裁判員裁判となります。初犯であっても、執行猶予がつかずに実刑となることも考えられます。

イ 逮捕の可能性が高い

 このように法定刑が重くなることにともなって、逮捕される可能性も高くなります。逮捕は、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあるときになされえます。(あくまで法定刑の観点から)軽微な罪であれば、これを免れるために、逃亡や証拠隠滅まではしないだろうという判断が働きます。逃亡や証拠隠滅をすればより罪は重くなりますし、それまでの地位や家庭を放棄することを伴うためです。しかし、法定刑が重くなり、懲役も想定されるような場合は、罪を免れるために、逃亡や証拠隠滅することが懸念され、逮捕されやすくなります。

ウ 弁護士の対応

 このように、強制わいせつとなれば、重い処分がありえますが、強制わいせつとして捜査された場合でも、弁護士から、事案の内容を精査した意見書を提出する等の活動により、検察への送致や起訴をされる際に、罪名が迷惑行為防止条例に代わることがあります。強制わいせつで捜査を受けたら、まずは、弁護士に相談しましょう。

2 痴漢行為で刑事事件となった場合の対応

⑴ 示談

ア 示談の重要性

 痴漢をしてしまい、迷惑行為防止条例違反等に問われた場合、刑事事件として捜査されるのが初めて(初犯)であれば、多くのケースは、罰金刑となることが見込まれます。罰金刑であれば、刑務所に行くようなことはありませんが、前科がつき、社会生活に多大な影響を及ぼし得ます。そこで、弁護士に依頼して、被害者の方に謝罪と賠償をし、示談をすることで、不起訴処分となるように活動していくことが必要です。迷惑行為防止条例違反の場合、被害者の方と示談ができて入れば、多くのケースは、不起訴となります。また、強制わいせつとされた場合は、罰金刑の定めがありませんので、懲役刑が科されることが想定されますが、初犯であれば、被害者の方と示談ができていることにより、執行猶予が付される可能性がありますし、示談ができていることをもって、不起訴とされることも考えられます。痴漢行為がいずれの罪に該当するとしても、被害者の方と示談をすることは、非常に重要です。

イ 示談ができないケースも

 例えば、電車内での痴漢において、被害者ではなく、目撃者が後に通報するようなケースでは、被害者不明のままに捜査されることがあります。

⑵ 示談以外に考えられる対応

 被害者不明の場合や、被害者が示談を拒否したような場合などには、不起訴処分を獲得するには、贖罪寄付や、性嗜好障害の治療などにより、反省と再犯防止の取り組みを示していくことが必要になります。また、示談ができている場合であっても、社会の中で今後二度と罪を犯さないために、そのような活動に取り組む方もいます。

3 弁護士に相談を

⑴ 示談交渉

 このように痴漢により刑事事件として捜査を受けた場合、示談が必要になりますが、痴漢による迷惑行為防止条例違反も、強制わいせつも、性犯罪に分類され、弁護士が介入しないと、被害者の方が連絡先の開示すらしてくれず、示談交渉をすることができないという状況が予想されます。まずは弁護士に相談しましょう。

⑵ 示談以外の対応

 示談ができないケースにおいても、贖罪寄付や、性嗜好障害の治療など、弁護士のサポートを受けて、不起訴処分を目指して活動していくことができます。

⑶ 早めのご相談を

 痴漢事案では、早期に被害者の方と示談をしていくことが重要です。また、取り調べに対して、どのように受け答えをしていくかなども、弁護士のアドバイスを受けた方が、適切な対応が望めます。早期にご相談いただくことで、なしうる対応も多くなります。まずは、オリオン法律事務所までご相談ください。痴漢事件対応経験を有する弁護士が、お話をお伺いします。


著作者:弁護士 枝窪 史郎

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