お店で万引きをしてしまい警察を呼ばれた、自分は今後どうなるのかというご相談を多くいただきます。
万引きは、刑法235条に定める窃盗の罪にあたり、警察に発覚すれば、刑事事件として捜査されます。
万引き発覚の経緯の多くは、お店の方に見咎められることによるものかと思います。お店の方が、警察に通報すれば、警察による取調べが行われます。警察がお店に来て、その場で話を聞いて解放される場合もあれば、警察署に同行して取調べを受けることもあります。お店の方が、その場で商品を返して、もう二度としないなら今回は警察には通報しないと言ってくれたような場合は、警察に事件が発覚しないため、事実上、刑事事件とはなりません。
万引き事件では、逮捕までされることは多くありません。しかし、何度も繰り返し万引きを行っていて前歴や前科がある場合や、盗んだ品物の数が多かったり、金額が高額にのぼったりする場合、転売目的で盗んだ場合、数人で協力して盗んだ場合(共犯)などには、逮捕される可能性があります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっていますが、盗んだ品物を自分で使う目的で万引きをする、自己使用目的のケース(例えば、自分が食べるための食品を万引きしたとか、自分で切るための服を万引きしたというようなケース)では、初犯であれば、金額や、数量、示談や被害弁償の有無によっては、不起訴とされることや、微罪処分として、事件を検察に送致せず、警察の判断で事件を終結させることもあります。微罪処分とするか否かについては、一定の基準の下に、警察の裁量が認められており、金額が2万円以下であることが一つの基準となっています。
一方で、転売して利益を得ることを目的として万引きを行っていたような場合、初犯であっても、起訴され、罰金刑となる可能性が高いです。前科があるようなケースでは、懲役刑が科されることもありえます。転売目的の場合、被害品の点数が多く、金額も高額になることが多いことや、その目的から行為が悪質であると評価されることが理由です。転売目的があることは、例えば同じ商品を何点も盗んでいることや、押収したスマートフォンのSNSのやり取りなどから認定されることが多いです。なお、盗品を売却する行為は、そのこと自体を処罰する法令はありませんが、状況次第では詐欺罪となる可能性があります。また、盗品を、盗品と知りながら譲り受ける行為も、有償無償を問わず、刑法上、犯罪行為とされています。
万引きをした際に、例えば、これを見咎めたお店の方や警備員を突き飛ばして逃亡しようとしたというような場合、事後強盗として強盗と扱われる可能性があります(刑法238条、236条)。その際に、怪我をさせるなどしてしまえば、強盗致傷の罪となりえます(刑法240条)。強盗罪、強盗致傷罪となってしまえば、初犯であっても、執行猶予がつかずに、実刑判決となる可能性もあります。
上述のように、目的や金額、数量にはよるものの、万引き事案においては、被害店舗に謝罪と賠償をし、刑事処分を望まない旨の意思表示をしていただくこと(示談)ができている場合には、微罪処分や不起訴処分となることが見込まれます。そのような処分であれば、前科がつくこともないため、示談をすることが非常に重要になります。
示談とは、謝罪と賠償により、被害者の方に、刑事処分を望まない旨の意思表示をしていただくことを意味します。この際の賠償とは、何を指すものか、いくらお支払いするべきなのかについて、万引きのような財産犯においては、まず金銭的損害の補填が必要になります。商品自体の金額の賠償がこれにあたります。
くわえて、当該万引きにより、発生したその他の損害について、賠償していくことも必要になります。例えば、お店の方が防犯カメラを精査したり、警察の捜査に協力したことで、本来その時間で行えたはずの業務を行えなかったことに対する賠償や、防犯措置を講じたことに要した費用などの賠償が必要になることがあります。これを考えると、万引きにおける賠償は、盗品自体の被害金額+αとなり、この+αがどれほどになるかは、事案や被害者の方のご意向によるところが大きいため、ケースバイケースといえます。
とはいえ、弁護士であれば、事案ごとにある程度の見込みを判断することもできますので、示談における賠償として適切な金額についても、ご相談ください。
示談の重要性について述べてきましたが、万引き事案においては、方針として、示談ということは一切できないとしているお店もあります。個人の商店や、フランチャイジーとなるコンビニオーナーなどの店舗責任者に裁量が認められる場合は、示談の交渉自体には応じるとされることも多いですが、例えばスーパーや、ドラッグストアなどでは、経営母体となる企業の方針として、一切の示談を行わないということがあります。そのような場合、企業側が例外を認める可能性は極めて低く、示談をすることは困難になります。
示談と関連して、被害弁償という言葉について説明します。被害弁償とは、被害品自体や、被害品の金額を弁償することを指します。盗品自体を返還したり、買い取りをしたりした場合に、被害弁償をしたと評価されます。
お店の方針などで、示談ができないケースにおいても、被害弁償のみ受け付けるということもあります。 被害弁償をしたことは、被害について一定の回復が図られたものとして、起訴不起訴の判断や、量刑判断において、示談ができているケースよりは効果は薄いものの、有利に考慮されます。示談が困難なケースにおいても、被害弁償だけでも認められないか交渉をし、これを受け付けてもらうことで、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できることもあります。
また、贖罪寄付という方法(公益団体等に犯罪被害者救済などの公益に役立ててもらうための寄付をすること)や、摂食障害を原因の一つとして窃盗をしてしまうケースにおいて、摂食障害の治療を具体的に行うことなど、示談以外にも、被疑者の真摯な反省や、再犯防止策への取り組みを示していくことができます。
万引きが発覚し、警察に呼出しをされた、警察の取り調べを受け解放されたが後日にまた取り調べが予定されている、といったケースにおいて、警察にどのように話をしたらいいか、盗品をどう扱ったらいいかなど、不安に思われる方もいらっしゃると思います。まずは弁護士にご相談ください。取り調べに対する対応について、適切な指針を提示することができます。
被害店舗に謝罪し、賠償をしたいと考えている場合は、弁護士に交渉を依頼することが望ましいといえます。謝罪と賠償を、刑事処分に影響しうる形で行うには、示談書を作成し、検察官や裁判所に提出していくことが必要になりますし、弁護士の介入により、円滑に交渉を行うこともできます。また、示談が困難なケースでも、事案に応じて、とりうる対応をサポートしていくこともできます。
示談を含め、各種の対応は、早期に行うほど、有効です。事案によっては、早期対応により、身柄拘束を回避し得ることもあります。万引きをしてしまい、お悩みの方は、オリオン法律事務所までご相談ください。
著作者:弁護士 枝窪 史郎
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